島田紳助がNSC生徒に一度だけ語った伝説の講義 『自己プロデュース力』
【概要】
初めて明かす成功の秘訣。本当は教えたくない勝利の方程式。
同期には華のある天才・明石家さんま、正統派漫才の第一人者・オール阪神・巨人。僕の人生、「あいつには敵わない」の連続だった 。
誰もが驚嘆した死に物狂いの「努力」、あらゆる分野に共通する緻密な「分析」の方法。この世の中はすべて才能。しかし、努力の仕方さえしればトップに立つことができる。
「あんまり言いたくない『極秘の話』がひとつだけあるんです。…僕もそんなに先が長いわけじゃないし。教えようか」
数々の事業を成功させ、自らのプロデュースで“羞恥心”など、社会現象を巻き起こした島田紳助が、これまでの人生を、勝利の方程式を、惜しまず語り尽した、すべての人たちに贈る、人生論の決定版、遂に刊行!!
【努力の方法教えます】
努力と才能をそれぞれ5段階に分ける。5の才能を持っているのに努力の方法が間違っているかも知れない。だから努力の方法を教える。
①自分だけの教科書を作る
漫才には教科書がない。そのため、これで勉強したら、絶対売れるという教科書を作った。自分が面白いと思った漫才を録音し、文字に書き出すことで「面白い」と感じる理由を言語化する。
②勝てない現場には行かない
体調が良くない、いいネタがない、自分達に受ける客層じゃない時は現場に行かない。行かなければ引き分け。
その代わり、勝てる現場では必ず勝つ。
オール巨人の漫才やモノマネのうまさ。明石家さんまの生まれついてのスター気質=「華」が自分にはない。
じゃあどうするか。
「悪役だ」
と閃いた。リーゼントやつなぎを着たり人と違うことをやった。
③本当の客を見極める
誰もを笑わすことができるのがいい漫才という時代に、20〜35歳の男性にターゲットを絞って漫才をした。
老若男女を笑わせるのではなく、一部に強く支持される漫才を意識した。自分達の本当の「客」は誰かしっかり 認識しておく事が大切。
④徹底した研究
ターゲットを絞り、どんなネタが必要なのか決め、多くの漫才を見ると漫才には2つの種類があることに気付く。
1:面白いけど、自分には出来ないもの
2:これ、俺と一緒だ、というもの
1は真似出来ないから2を真似する、のではなく、2の漫才をいくつも見つけること。それぞれの漫才は違うが、その個性を結びつけているのは、見る側の個性。いくつも発見することで、自分のやれること、やるべきことがはっきりしてくる。
同年代のものだけを見るのではなく、過去に遡ってみる。どんな人が売れ、どんな笑いが受けていたのか。それがどう移り変わっていったのか、あるいは共通しているものがあるのか調べる。
⑤「X +Y」の公式の確立
「X +Y」で物事を考える。
Xは自分の能力。自分にしか分からないから、自分自身と向き合って探す。
Yは世の中の流れ。過去に何があり、今はどんな状況で、数年後どう変わっていくのか。これは研究すれば分か る。
このXとYが分かった時初めて悩めばいい。これが分からずに悩むのは無駄な努力。
一発屋は何も考えず、自分のことやりたいことをやり続ける「X」。たまたま「Y」の方から「X」にぶつかったきただけ。「Y」はすぐに動いていってしまう。
⑥「技術派」と「感情派」
自分達は天才じゃない。だから、やろうとしたのは「技術」ではなく、「感情」で伝える漫才。
技術派は笑うよりも前に関心してしまう。感情派はお客さんと一緒に笑ってしまう。
⑦漫才の「間」
様々な漫才を研究した結果、「上手い」漫才には「間」が多いことに気づいた。もう1つ気づいたのは玄人が「上手い」という漫才とお客さんが「面白い」と思う漫才は違うということ。
そこで「上手い」漫才を目指すのではなく、下手くそと言われてもウケる漫才を目指し、「間」を極端に減らした漫才をやってウケた。
⑧テレビタレントとして売れる「企業秘密」
「賢い」というのは色々なことを知っていることというイメージがあるが実際は違う。本当の賢さは一分野を掘り下げる事。ただタレントは時間が無いため、一分野につき一箇所を掘り下げて全て知っているような顔をする。
ただしそこで嘘はつかない。その一箇所を本当に好きになる事。本で読んで頭で記憶しただけではすぐにボロが出るため、「心」で記憶する。
「頭」で記憶したことはすぐ忘れるが、「心」で記憶したことは一生忘れない。
そのためには、
・感情の起伏を激しくして、いつでも感じなければならない。
・色々なものに興味を持ってウロウロする変なやつでいること。自分の足で歩き回って、自分から話しかけることが大事。
人が知っていることを知る必要はない。知識のドーナツ化を目指しましょう。誰でも知っている真ん中ではなく、誰も知らない周辺を話さないといけない。
⑨「心」で話すと映像が見える
起こった出来事=素材を料理して提供するのが仕事。人の心を揺らしてお金をもらう。お客が求めているのは「変化」
【Mー1の勝ち方】
テレビ芸と舞台芸は別物。短いネタではっきりしたものを。インパクトのあるキャラ付けと見た目が大事。
ネタははっきりしたものにする。歌で言えばサビのみ。ストーリーにしたら論理的なものになってしまい面白くない。
笑いはローリング。ネタを進めていくうちに、雪玉が転がり大きくなるように、笑いも大きくなっていくのが理想。
ボクシングと一緒で最後の印象が大切なので、最後の30秒で笑いを取る。
【感想】
この講義が行われたのは2007年。2021年に読んでもビジネス書としても、はたまたYOUTUBEをCH開設する際にも役立つ金言のオンパレード。紳助周りにはフォロワーが多く、興味のない人にはとっつきづらい印象を持つ方も多いと思うが、そんな人こそ手にとってほしい。この本に書かれていることをまとめていること自体が野暮なことだと感じつつ。。
『結婚できない男』脚本家から学ぶ脚本術はビジネス書としても良書だった。
映画やドラマの構造に興味があり最近脚本について記された本を色々と読んでいるので、印象に残った部分を忘備録として記す。
脚本は大きく分けて二つの段階がある。
①「登場人物がいてストーリーらしきものがあって、決められた枚数の中で一定の内容が描かれ、それを読めば何が書いてあるか理解できる」事が第一段階
②『読む人に「面白い」
と思わせ、引き込み、感動させ、共感させる作品を書く』事が第二段階
①については既にたくさんの本が出版されているため、②についての具体的な方法を記している点で
この本は巷に溢れた脚本術と異なっている。
・一にも二にもインプット!!
→アウトプットの前にまずはインプット。
「P/PCバランス」(スティーブン・R・コヴィーの『7つの習慣』から引用)を大切にすること。
Pは成果(Production)、PCは目標達成能力(Production Capability)
作品がPで、脚本を書く能力がPCとなる。野菜で例えると作物がP
で畑がPC。
いい作品を書くためには作品(P)をどうするかよりも脳(PC)をどうするかが大切。脚本の場合は他の分野よりもPCが疎かにされがちのため、ここを意識してインプットしていく。
また、このPCはすぐに効果が上がるものではなく、最低三年ほど時間がかかる。一年だと短すぎるし、10年だと皆辞めてしまうから。。。
完訳7つの習慣普及版 人格主義の回復 [ スティーブン・R・コヴィー ]
・名作映画100本ノック
→「ローマの休日」「ゴッドファーザー」「用心棒」など古今東西の名作をただ見るのではなく「分析」する。
「面白い」という感覚的なものを「面白いのは何故か」という論理に置き換えることで、テクニックをインプットする。
例として挙げられているのがヒッチコックの名作『見知らぬ乗客』の1シーン。
主人公のテニス選手がある男に付きまとわれ、試合中他の観客が左右に顔を振ってボールを追うのに対して、その男はじっと主人公を見つめる。このゾッとするシーンが何故ゾッとするのか「分析」する。
男だけがじっと見つめていても怖くなく、周囲の観客の中にいるからゾッとする。
結論として、
「何もないところにAを置いてもインパクトはなく、Bばかりの中にAを置くとAの特徴が際立つ」
という公式を見つける。
このような公式を自分で見つけパターン化していく事で、面白い作品を書ける状態に近づいていく。
・逆バコから構造分析をする
「ハコ書き(シーンごとに場所・登場人物・出来事などを簡潔に書いたもの)」の反対をやる。
注意点:
①始めて見るときにはやらない。自分がどこに感動して、どこを面白いと思ったのか感想を持つため。
②横長の用紙に、一覧出来るように作る。
こうして出来上がった構成から、主人公の登場タイミングや、ストーリーの大きな転換点、起承転結に分けたり、三幕構成や時間の流れを意識して考える。
(※この構成とは別に、登場人物の相関図を書いてもいい)
→「ストーリーを3行でまとめろ」
語られる物語の本質を把握しまとめることは一見簡単そうで難しい。
上記で書かれた作業を繰り返すことでストーリーの「型」を身につけられる。
※映画が何を描こうとしているかという抽象的なテーマと、具体的なストーリーは異なるため注意が必要。
『E.T.』では
「少年が宇宙人との間に素晴らしい友情を育み、成長する」
は抽象的なテーマで、
「主人公が地球に取り残された宇宙人と出会い仲良くなるが、彼が宇宙に帰りたがっているのを知り、送り返してやる話」が具体的。
・シャレード
「言葉に頼らず、何かに託して表現すること」=「説明ではなく映像で表現すること」
『ローマの休日』でアン王女がパーティーの場で、スカートの中片方の靴を脱ぎ、足を掻いているという描写。
セリフで退屈と言わせずに映像で心理を表現するテクニック。
・ストーリーに必要なもの
「主人公の一貫したエモーションが新しい状況や展開を生み出していくこと」が必要。
→これで思い出したのがドゥニ・ヴィルヌーブ監督作『プリズナーズ』。娘を何者かに誘拐された主人公が娘を助けたいという「エモーション」を基に一線を踏み越えていくサスペンスです。まさにこの「エモーション」こそが観客を引きつけるモチベーションになっている作品です。
プリズナーズ【動画配信】
・ストーリーの書き方
起承転結や三幕構成を意識して書くのではなく、6代要素に分けて考える。
①「登場人物」が②「ある状況におかれることでストーリーが始まり」③「ストーリーが展開しながら」④「盛り上がっていき」⑤「クライマックス」を経て⑥「結末に至る」
ものだと理解し、この六要素がちゃんと配置され、ストーリーがその要素を満たしているかを考えながら作っていく。
・ストーリーはデジタル、人間はアナログ
「主人公が復讐を目指す」という一貫性のあるデジタルなストーリーに対して、愛する人が現れたり、犯人が悪人でなかったりすると主人公のアナログな気持ちは揺らぐ。このデジタルとアナログのギャップこそがドラマ。
→これが一番印象的でした。尾崎さん自身書かれているように他の脚本術の本には書かれていないと思いますが、手法としては古典的で多くの作品に取り入れられています。『スターウォーズ』におけるルークスカイウォーカーの父、ダース・ベイダーに対する気持ちもまさにこの手法を用いたものではないでしょうか。ストーリーがデジタルに進む中、父としての愛情と、悪の皇帝としてのダース・ベイダーの間で揺れ動くルークの心情こそが観客を引きつける鍵となってますよね。
・初心者が避けたほうがいいジャンル
群像劇、スポーツもの、取材や勉強がすごく必要なもの、ミステリー、ファンタジー、アクション、SF、時間や空間を限定したもの
・脚本におけるWHATとHOW
料理では素材がWHATで調理がHOWと分かりやすいが、脚本だと混乱しがちなため意識的に区別すると良い。
「こんなことを書きたい、訴えたい」はWHATで
「それをどう描くか」がHOW
作品の面白さはHOWに依る部分が大きい。
映画を分析する際にも
「作品のテーマ(WHAT)は素晴らしいが、それをこんなHOWのテクニックで形にしている」と意識する。
感想
脚本のHowto本としてだけじゃなく、映画やドラマの構造がどのような意図で作られているのかが分かる良書。
WHATではなくHOWの重要性を例に挙げるまでもなく、ビジネス書としても参考になる部分は多い。自分本位ではなく観客(顧客)を意識してどう取り組めるかが大切なんでしょうね。